| You And Me |
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ R a t c h e t_
大河くんの隣に並んで歩くはずだったストリート。 大河くんと一緒に見て回るはずだったショッピング街。 大河くんと2人で食事するはずだったレストラン。 私は今、いずれも叶えることが出来ずに1人で歩いていた。 みんなが、今日が大河くんのバースデーだなんて知っていなければ・・・ みんなが、ケーキでお祝いなんてしてくれなければ・・・ 「って、そんなこと言ったって・・・ね」 私が勝手に、1人で大河くんをお祝いしようとしただけ。 私が勝手に、みんなと一緒に大河くんのお祝いをするということを受け入れられなかっただけ。 私が勝手に、落ち込んだだけ。 誰も悪くない。 私が勝手に、思っただけ。 ただ、それだけだから。 「みんなが作ったケーキ・・・美味しかったのかなぁ・・・」 大河くんが、みんなからとても信頼されているのはわかっている。 大河くんが、みんなからとても好かれているのもわかっている。 わかっているはずなのに・・・ 「はぁ・・・疲れた。なんだか、今日の自分はもう忘れてしまいたい気分・・・」 この件について考えることに、とても疲労感を覚える。 考えても考えても、何一つとして結論が出てこないのだ。 そして、理想と現実が必ずしも結びつくとは限らないということが・・・身にしみて感じる。 あれこれと考えながら歩いていた私は、気が付くとバーに来てしまっていた。 こうなったら、アルコールを入れてちょっと良い気分になって・・・そのまま部屋へ帰ってベッドに潜り込もう。 そうすればすぐに明日が来る。 今日が終わって明日になってしまえば・・・再び平穏な一日が始まるのだ。 そう思って潔く店内に入ると、私はいつものカクテルを注文する。 しかし・・・それほど甘くなかった。 一杯飲み終えたところで手が止まる。 「んー・・・」 空き腹にアルコールは・・・いつもより早く酔いを回した。 あぁ・・・このままでは、良い気分どころか部屋に帰れなくなってしまう・・・ そう判断した私は、早々に精算を済ませてバーを後にする。 「もう・・・帰ろう・・・」 これ以上行く当てもなく、夜風にあたりながら私は帰途につくことにした。 |
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_T a i g a_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
ぼくは真っ先にラチェットさんの部屋へ向かった。 しかし窓には明かりが点いておらず、まだ帰ってきていない様子だった。 「ラチェットさん・・・」 ぼくは急に不安を覚える。 帰りに誘ってくれたのに、先に帰ってしまったこと・・・ あのラチェットさんが、何も言わずに姿を消したこと・・・ 何かあったとすれば・・・それはきっとぼくのせいだ。 そう思ったら、いてもたってもいられずにその場を飛び出してしまった。 ラチェットさんの行きそうなところなんて・・・悔しいけれど皆目見当もつかない。 でも、探さないではいられなかった。 ラチェットさんはどこ・・・ どこにいるの!? ぼくは、知っている場所へ手当たり次第走った。 しかしその先には・・・ラチェットさんはどこにもいなかった。 「もしかしたら、入れ違いで帰ってきているかもしれない。部屋に戻ってみよう」 そう思って、再びぼくはラチェットさんの部屋へ急いだ。 最後の角を曲がろうとしたその時・・・ ――― ドンッ!! 慌てて走っていたぼくは、誰かに思いっきり体当たりしてしまう。 ぶつかった反動で大きく倒れてしまったその人は・・・ゆっくりと顔を上げた。 「ご、ごめんなさ・・・ラ、ラチェットさんっ!?」 「ん・・・?」 それは紛れもなく、今までぼくが散々探していた人・・・ラチェットさんだった。 ラチェットさんは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに口元だけ微笑んで「起き上がらせてくれる?」と呟く。 ぼくが慌てて手を差し出すと、ラチェットさんは自身の右手を伸ばした・・・ 「あ・・・」 しかし、その手がぼくの手を掴むことなく・・・胸元へと引き戻される。 その後には、「んー」というため息にも似た・・・何かを考え込むような声が聞こえた。 「・・・ラチェットさん、どうしたんですか?」 「あ・・・うん、その・・・手が汚れちゃうから・・・ね」 「汚れちゃう?」 軽く握り締めるラチェットさんの右手へと視線を向けると・・・かすかに血が滲んでいるのが確認できる。 「・・・怪我っ! す、すみませんっ! 早く手当てしないと!!」 「うん、大したことないから・・・」 きっと、ぶつかった拍子に擦り剥いてしまったんだろう。 どうしよう! ぼくのせいだ。 ラチェットさん自身は「全然平気よ」と言いながら、慌てふためくぼくを見てクスクスと笑っていた。 「あの・・・笑い事じゃなくて、本当に・・・消毒しないと。ぼく、部屋まで送りますから・・・」 「ごめんなさい・・・本当に大丈夫なの。だから、大河くんはもう良いわ」 そう言って無傷のもう片方の手で地面をつき、ラチェットさんは自力で立ち上がる。 ポンポンと、スカートについた砂埃を払った。 「もう良いわ」と言われて、ぼくは改めてラチェットさんを探していたことを思い出す。 「そうだ、ぼく、ラチェットさんを・・・」 「それじゃあね、大河くん・・・また明日」 ぼくがそう言いかけた途端、上から覆い被せるようにラチェットさんは言葉を発した。 「また明日」という語尾が妙に強く聞こえた気がする。 まるで、今日はもうぼくとは会話をしたくないみたいに・・・ そんなラチェットさんに何も言えずにいると、何事もなかったかのようにぼくの前から去ろうとした。 「ちょっと待ってくださいよ! ぼくは・・・」 「ごめんね、今は何も話せる気分じゃないの」 「ぼく、あなたのこと探してたんですよ?」 やっとの思いで、探していたことを伝える。 もしかしたら、ぼくなんかとは話をしたくなかったかもしれない。 だけど、このままお終いにしてしまったら・・・きっと後悔する。 ぼくも・・・ラチェットさんも・・・ そうしてぼくが引き止めると、一度ゆっくりと目を閉じて一呼吸置いてから、ラチェットさんは再び口を開いた。 「・・・今、何時?」 「え? 11時・・・45分くらいですけど・・・」 不意に時間を聞かれ、それにぼくが答えると・・・ラチェットさんはフーっと長い息を吐いて言葉を続けた。 「・・・いいわ、部屋に入って」 そう言って、話をすることを許される。 しかし、その表情から乗り気ではないことはすぐにわかった。 ふと、サジータさんに「嫌われてるんじゃないの?」と言われたことを思い出す。 やっぱりぼくは・・・嫌われているんだろうか・・・ そんな不安を胸に抱きながら、ぼくはラチェットさんの後に続いて部屋へ入った。 |