手紙 〜後編〜

 ――― 日本、帝都・銀座、大帝国劇場。

 つい先日大きな公演を終えたばかりで、劇場の面々はそれぞれに悠々と流れる時を過ごしていた。

「ごくろうさまです!」

 柔らかな笑顔を向け、彼女は郵便配達員から郵便物を受け取る。
 彼女が一礼すると、赤いリボンで結い上げられたポニーテールがしなやかに揺れた。

「あら、コレは・・・」

 一通の封書の宛名欄を見ると、彼女は再びポニーテールを揺らしながら2階の方へと急ぐ。

「大神さん・・・紐育の大河さんからお手紙ですよ」

 2階のサロンでは、数名のメンバーが優雅なティータイムを楽しんでいた。
 ポニーテールの彼女は、届いたばかりの封書をその輪の中に居た唯一の男性へと手渡す。

「あぁ、ありがとう、さくらくん」

 彼はその封書を受け取ると、その場で開封した。
 乾いた紙の音がパリパリと周囲に響く。
 1枚目、2枚目・・・と、彼はしたためられた文面を懐かしみ帯びた目で追っていった。
 すると最後の1枚に差し掛かった時、明らかに今までのそれとは違う、別の人間の書体にはっとする。

「・・・隊長、どうしたの?」
「ん? あぁ、いや・・・ちょっと意外な人からの手紙が同封されていたんだ」
「意外な人? 私たちの知ってる人デスか?」
「そうだね・・・うん、俺たちの仲間・・・だよ」

大神一郎様

あの日、私にチャンスをくれたこと、とても感謝しています。
効率の良さだけが全てではない。
人に優しさを与え、信じ合う心を持ち、そして誰かを愛する気持ちが、人々を守れる真の強さへと繋がる。
あれから1年余りが経ち、紐育華撃団・星組が正式に立ち上げられ、私は彼らと共に戦い続けました。
大神一郎・・・あなたには、改めて感謝の意を述べなければなりません。
彼に・・・大河新次郎という人物に出会わせてくれたこと。
彼と出会えて・・・彼と共に戦うことが出来て、私は心の底から嬉しいと感じる事が出来ました。
互いに命を預けて背中を守り合うこと。
優しさ、信頼、そして・・・愛。
離れていても心はいつも傍にある。
私たちはきっと、見えない何かで繋がっているのだ・・・と、互いに言い聞かせて。
そして、共に生きてゆくことを誓って・・・。
あの時・・・帝都で私が目にした『真の強さ』が今、自分の中にある。
人と人との繋がりが、こんなにまで大きな影響を与えるのものなのだ・・・と、改めて気付かされました。
今思えば、『出会うべくして出会った』と言っても過言ではないのかもしれません。
彼は、私にそれだけの影響を与えてくれたのです。
そして、私の中で彼の存在は確実に大きなものへと変化しています・・・今この瞬間にも。
またいつか会うことがあれば、もしかしたらその時は・・・
どうやら、大河くんの方が先に手紙を書き終えてしまったようです。
彼に覗かれてしまうのは少し恥ずかしいので、私もこの辺で末文とさせていただきます。

それでは、お元気で。

紐育華撃団・星組
ラチェット・アルタイル

 最後の1枚を読み終えると、彼は微笑みを浮かべて静かに手紙をたたんだ。

「見えない何か、か・・・」

それはね、『赤い糸』って言うんだよ、ラチェット・・・

 一足早い春の風が、紐育から帝都へと舞い降りた。
 日本にも、もうすぐ桜の咲く季節・・・春がやって来るのだ・・・。

END