You And Me -Subaru-

_ _ _ _ _ _ _ _ Subaru _ _ _ _ _ _ _ _

「昴、ちょっと話があるんだけど・・・今いい?」

 僕はラチェットに呼び出された。
 彼女の言う話とは、恐らく昨日の件だろう。
 あまり気が乗らなかったが、大河にああ言ってしまった手前、結末がどうなったか気にならないでもなかった。

「・・・ああ、別にかまわないよ、ラチェット」

 そう答えると、彼女は「良かった・・・」と小さく呟く。
 とりあえず、屋外サロンの方へ場所を変えることにした。

「それじゃ、話というのは・・・昴には感謝しなければならないことがあるの。何のことか・・・わかるわよね?」
「いや・・・僕は取り立てて良いことをしたつもりはないが・・・むしろ言いたいことを言ってやっただけだ、大河に」
「それでも。実際、昴の言葉が大河くんを導いてくれたじゃない。だから・・・ね、ありがとう」
「まぁ・・・結果的に話が解決したのなら、それでいい・・・」
「でも、なんで大河くんに私を追うようなことを言ったの? 昴は何を知っていたの?」
「それは・・・」

 まず第一に・・・数日前に、ラチェットがプラムにケーキ作りを教わっていたのを偶然見掛けてしまったこと。
 第二に、僕たちがケーキを作って大河の誕生日を祝うという話をした途端、ラチェットの表情が変わったこと。
 第三、みんなでケーキを食べようとした時、大河がラチェットのことを忘れず呼びに行こうとしたこと。
 第四、「ラチェットに嫌われてるんじゃないか」と言われても、大河は不安な表情を微塵も見せなかったこと。
 第五、あの時・・・大河とラチェットは、確かに一緒に帰ることを約束していたということ。
 全て見えていたこと。
 それらを合わせて考えてみれば・・・

「全てお見通しさ。二人とも・・・」

 二人ともが・・・互いに想い合っているということ。
 彼のために、ケーキ作りを教わっていたラチェット。
 彼のために、実は1人で密かに誕生日を祝う準備をしていたラチェット。
 幸せを共有しようと、忘れずに彼女を呼びに向かおうとした大河。
 彼女に嫌われているわけがないと、確信していた大河。

「君たち二人を見ていたら、とてももどかしいから・・・渇を入れてやったんだ、大河に」
「もどかしい・・・って、だから、昴はどこまで知って・・・」
「好き・・・なんだろう? 少し観察すればそれくらいすぐ分かる」
「す、すぐ分かるって・・・その・・・」

 図星を言い当てられて、ラチェットは顔を紅潮させた。
 あまり見ない表情だったから、僕にとっては少し新鮮だった。
 そういう顔もするようになったんだね、ラチェット。

「時にラチェット・・・彼の前で派手に大泣きしたという話を聞いたのだが、それは本当かい?」
「そ、そんなことっ・・・いえ、そのー、ほらっ、お酒! あの時はアルコール入ってたから・・・少し」
「ふぅん・・・ま、僕には関係のないことだから、これ以上は詮索しないよ」
「大河くん・・・なんでそんなことまで言っちゃうの?」
「ははは・・・ラチェット、このぶんだと君はもっと変われるね」

 他人のことなんて、どうだって良いと思っていた。
 でも、ラチェットを見ていたら、そういう風に変われるのも良いのかもしれない・・・と思えてきた。
 こんなことを考えている僕自身も、もしかしたら変わってきているのかもしれない。
 確実に、少しずつ。
 僕もいつか、誰かのために何かをしてあげたいと思うことがあるのだろうか。
 誰かを・・・好きだと思うことができるのだろうか。
 先のことは分からないが、その見えない未来に賭けてみようと思う。
 僕が好きになる人のために。。

END