| Dicentra |
セレスティア城の最下層・・・そこに彼は1人佇んでいた。 特に何をするわけでも無く、ただ一点だけを見つめて。 手には、小さいながらも鮮やかな紫の彩を放つ山草が握られている。 飾るために摘んできたのだろうが、いざ目の前に立つと色々な思いが頭を巡りその行動を躊躇われた。 唇を噛み締めて瞳を閉じる。 沸々と湧き上がる感情は、決して怒りなどではなく言葉も出ないほどの悲傷と後悔だった。 最初から届かない場所に居て、近くに居るのに手を伸ばしても触れることさえ叶わず。 僅かに掠めたと思われた心は通うことなく離れ、そして彼女はさらに遠い場所へと旅立った。 ――― 最期まで・・・貴女は手の届かない人だった・・・ ここで立ち止まっていられる状況ではないことくらい、彼自身も分かっているはずだ。 だがどうしても、前へ進む状態に気持ちを持っていくことができないのだ。 失ってなお、募る想いは溢れるばかりである。 『バカだね、失恋したくらいでへこたれるオトコじゃないだろ?あんたは。シャキっとしな、シャキっと!』 ふとそんな声が聞こえた気がした。 それはもちろん幻聴だ。 しかし、きっと彼女ならそうやって背中を押してくれるに違いない、と彼は滲む涙を拭い口元を綻ばせた。 「オレは・・・誰がなんと言おうと、貴女の味方ですから・・・永遠に・・・ね、サイアリーズ様・・・」 そう呟きながら、男は手にしていた小さな紫の花を石碑の傍らに添えた。 END
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あとがき ソルファレナ奪還後、本拠地に戻ってぶらついてたら、あの場所に居る彼を発見してじんわり涙しました。 その後ろにはゲオルグも居たのですが、きっとカイル君の方はしばらくあの場所に通いつめてたんだろうなと想定して。 ヴォリガさんからの目安箱投書や、エンディングのカイルのその後なんかを見てると、さらに涙が出てきそうです。 ちなみに、タイトルの「Dicentra」は文中の花ことで、「コマクサ」という高山植物の学名(らしい)です。 そしてもうひとつ、同じ種属でコマクサと色や形の良く似た「ケマンソウ」というお花もあるそうです。 色々と調べた結果どちらの花言葉も合っているような気がしたので、両方の意味を込めて「Dicentra」にしてみました。 ってーか、初の幻水SSでこんな話かよー!みたいな(^^; ■Dicentra ディセントラ コマクサ(学名:Dicentra peregrina) → 花言葉は「高嶺の花」 ケマンソウ(学名:Dicentra spectabilis) → 花言葉は「従順」「失恋」 |